伴走型サポートで年間100名規模の障がい者雇用を実現!D&IのRPOサービスの特徴とは
事業企画局 局長
髙栁 肇 様
POINT
課題
グループ従業員数が急増したことで、年間100名規模の障がい者雇用を行うことに。自社のリソースやノウハウだけでは目標達成が難しかった。
取り組み
障がい者雇用の採用プロセス全体を支援するRPOサービスを提案。採用計画立案から企業に伴走し、状況に合わせたオーダーメイド型のサポートを提供した。
成果
初年度から採用人数の大幅アップを実現できただけでなく、継続的に採用できる仕組みづくり、定着や戦力化を推進する取り組みも始まっている。
今回は、2023年11月よりRPOサービスを利用し、採用人数の大幅アップに成功している株式会社オープンアップウィズにインタビューを実施。同社で障がい者雇用を担当されている髙栁さんに、RPOサービスを利用することになった経緯、サービス利用による成果や社内の変化、今後のビジョンなどを伺ってきました。
伴走型サポートで年間100名規模の障がい者雇用を実現!D&IのRPOサービスの特徴とは
──まずは、オープンアップウィズにおける障がい者雇用の状況からお伺いしていきます。従来は、どのように障がい者雇用を進めていたのでしょうか?
当社はオープンアップグループの特例子会社として、2005年に創業しました。知的障がいのある方の採用がメインで、採用人数も年間数名程度と多くありませんでした。ですので専任の採用担当も特には置かず、採用ニーズが発生したタイミングでハローワークや縁故採用を利用して対応していました。
──髙栁さん自身がオープンアップウィズに関わるようになった経緯も教えてください。
私自身はこれまで、ずっとアウトソーシング業界でキャリアを歩んできました。オープンアップウィズに関わることになったのは、自分がやったことのないことにチャレンジできると感じたからです。今まで私がやってきたのは、クライアント企業から仕事をまるっと請け負い、自社で代行するというものでした。しかし今回は、全国にたくさんある自社グループの営業所の事務業務を集約し、アウトソーシングしたいというものだったんです。対象が社外から社内に変わるという点に魅力を感じ、面接を受けることにしました。
面接に行ったところ、オープンアップウィズにおける障がい者雇用の話を聞きました。私自身、身近に障がいのある方がいることもあり、キャリアのどこかのタイミングで障がい者雇用に関わることを考えていました。また今回のミッションで、全国の営業所から集約した事務業務をうまく標準化できれば、障がい者雇用で受け入れた方々に担当してもらえるんじゃないかと考えたんです。ただこの仕組みを実現するには、業務を依頼する側と受け取る側の間に立ち、両者を調整する存在が必要だろうと。自分だったら、今までの経験を活かしてその役割を担えるんじゃないかと思い、オープンアップウィズに入社することになりました。
──髙栁さんのオープンアップウィズ入社がきっかけとなり、アウトソーシング事業もスタートすることになったわけですね。事業開始後の流れについても教えてください。
アウトソーシング事業がスタートしたのは2018年3月。最初は横浜サテライトを開設し、グループ従業員の健康診断の紙をPDF化して保存する仕事から請け負い始めました。そこから受託業務が増えていき、四ツ谷、町田に新たな事業所を開設していったんです。
こうした動きを支える背景にあったのが、オープンアップグループの急拡大です。M&Aなども含めてグループ会社が増えており、全体の従業員数が急増していたんですね。それに比例して、特例子会社でも今までにないペースで障がい者雇用を行うことが必要になってきました。これまでハローワークや縁故採用で対応していたのが、2022年には年間40名の障がい者雇用を行うことになったんです。
当時は採用担当もおらず、また今までのやり方では達成できない人数でしたから、まずは部門や職種を問わずメンバーを集め、「プロジェクト40」という社内横断プロジェクトを立ち上げました。そこで「何をやるか」「誰がやるか」を話し合い、こまめに進捗管理をしながら進めていきました。結果、年間で50名を採用できるなど成果は出たのですが、一方で今後を見据えたときに難しさを感じていたんです。
──自社だけで年間50名もの採用ができたのに、課題感を持ったということなのですね。そこから、D&IのRPOサービスを利用することに決めた理由も教えてください。
まずは1年間、自社だけでやってみようとプロジェクトを動かしてきました。一定の成果は出たものの、翌年の採用人数目標が100名以上と倍増している中で、自分たちだけでこれ以上の成果を生み出し続けるのは難しいと感じました。そこでリソースはもちろん、障がい者雇用に関するノウハウを持つ企業の力を借りようということになったんです。
D&Iにお願いすることになったのには二つの理由があります。一つは、障がい者雇用に関する知見やノウハウが豊富にあること。以前から障がい者雇用の相談をする中で、その点は大きく評価をしていました。そしてもう一つが、若い社員も多く、熱量やポテンシャルの高さに魅力を感じたことです。年間100名以上の障がい者雇用という未知の挑戦に挑んでいくうえでは、正攻法だけではうまくいかないこともあると思っていました。そんなとき、熱量やポテンシャルの高いみなさんとなら乗り越えられるんじゃないかと感じたんですよ。
──ここからは、D&IのRPOサービスを利用してみての感想を伺っていきます。サービス開始後は、どのように進めていったのでしょうか?
一般的なRPOサービスでは、自社でプロセス全体を組み立てた後、その一部を委託することが多いかもしれません。もしくはプロセス全体の設計部分を委託し、実行自体は自社でやるケースもあるでしょう。D&IのRPOサービスはどちらとも違い、自社の社員、同じミッションに挑む仲間のような感じで加わってくれて、一緒にプロセスをつくっていくだけでなく、実行していくところにも関わってくれました。
──具体的にはどう進めていったのでしょうか?
まず最初に、障がい者の就労支援機関に次々とアプローチし、自分たちが「何をするのか?」「なぜやるのか?」を提案していきました。市場調査的な意味合いもありましたが、やりたいことを伝えたことで、賛同や反対のリアクションを得られたのが良かったです。
そこで感じたのが、予想以上に戸惑いの反応が多いということです。当初の想定では、障がいのある方をたくさん受け入れると伝えたら、支援機関も喜んでくれると思っていたんです。間違いなく社会に良いことをしていると思っていましたから。でも、実際の反応はそうじゃなかった。これだけの大規模採用は支援機関にとっても初めてのことで、なんだか得体のしれないものだと警戒感を持たれていたようでした。
──そういった反応を受け、次はどのような動きを取ったのでしょうか?
「障がいがある方々を多く採用する」という方針には理解してもらったものの、どんな会社で、どんな人たちと働き、どんな仕事をするのかという情報が足りないことが警戒感につながっていると考えました。そこで次のステップとして、説明会や職場見学を実施したり、例えば社員の素の部分を動画で見せたりと、情報発信に力を入れていきました。継続的な情報発信により、自分たちが何者なのかを理解してもらおうと。そうすることで支援機関の方はもちろん、障がいがある方々にも安心してもらえるのではと考えたんです。
──情報発信をしていく際に意識したことはありますか?
どんな情報をどのように発信していくのかもD&Iのみなさんとざっくばらんに話しながら進めていきましたが、その際に大切にしていたのが「相手が求めている情報を発信する」ということです。例えば、会社の歴史や仕事内容を堅苦しく説明したって興味は持ちませんよね。それよりオフィスやトイレがきれい、食事を安く食べられる、一緒に働く社員の感じが良い、といった情報を写真や動画で伝えていくようにしました。
実際、入社した方のアンケートでも、「職場見学に来たとき、廊下ですれ違った方の対応が良かったのが印象に残った」という声がけっこう多いんです。「この職場で働きたい」「この人たちなら安心」と思っていただけるかが、採用や定着にも重要だと感じましたね。
──ここまでのお話から、オープンアップウィズとD&Iがタッグを組みながら採用プロセスをつくりあげていったことが伝わってきました。こうした取り組みを続けていく中で変化を感じたのはどんなときでしょうか?
さまざまな支援機関と継続的に接点を持っていたのですが、あるタイミングから、支援機関の間で当社の話が出るようになったそうなんです。「あの会社で障がい者をたくさん受け入れているらしい」と。それに加え、「障がい者雇用の取り組みについて話してほしい」といった講演の依頼も来るようになりました。こうした変化から、支援機関に認知され、徐々に信頼してもらえるようになったと感じるようになりました。
──こうした変化は、採用人数にもつながっていったのでしょうか?
D&Iとは2023年秋頃からタッグを組み始めましたが、翌年の2月、3月くらいから採用人数がググっと増え始めました。多くの企業が障がい者雇用を強化している中で、障がい者の採用市場も今や取り合いになっています。そういった状況下でも採用人数を増やせたのは、支援機関の方々が私たちの考えを支持してくれ、就職先を探す求職者の方々に当社を勧めてくれるようになっていったからだと感じています。このように継続的に採用できるサイクルができたことで、年間100名以上の採用も実現できるペースになっています。
──その後も採用人数が増えているそうですが、どういった工夫をしているのでしょうか?
説明会を開催する際、質疑応答の時間を設けていますが、そこでの質問がとても役に立ちました。いろいろと聞かれることで、障がいのある方々がどんなことを気にするかや、当社に足りていないことが何かを知ることができたからです。
例えば「地方に住んでいるからフルリモート勤務はできないのか」「1日8時間ではなく短時間勤務はできないか?」「仕事の進捗をこまめに報告するのではなく、ある程度進んでから報告したい」など、さまざまな質問や要望からより良く改善していくためのヒントを見つけていきました。
──そういった質問や要望から具体的な形になったものはありますか?
例えば働き方については、従来は出社とリモートのハイブリッドでしたが、フルリモートの勤務体系も検討しています。従業員の評価についても、従来は評価をしないのが基本方針でしたが、評価制度を導入することにしました。その他にも、社内で働き方の多様性を推進していく部署を立ち上げたりもしています。この部署では実験的にいろいろな取り組みにトライしながら、より多くの方が自分らしく働ける環境づくりを進めていく予定です。
──オープンアップウィズでは、『ウィズ学園』という独自の取り組みも行っているそうですが、これはどういったものなのでしょうか?
『ウィズ学園』は、社員の採用、定着、戦力化を強化するために始めた取り組みで、いくつかの役割を持っています。一つは、就業経験がない障がい者の方を受け入れ、育成をしたうえで現場に配属するというもの。これによって、採用人数をより増やしていくことを狙いとしています。その他にも、配属された部署にちょっと合わなかった方や今よりペースを落として働きたい方を、一時避難的に受け入れる場所としても機能しています。職場や仕事に合わなかったら辞めるしかない、となってしまうのではなく、キャリアにおける階段の踊り場のような部署を設けることで、誰もが長く働き続けられたらと思っています。
──これまで紹介してもらったさまざまな取り組みが、入社後1年の定着率約9割という高い成果につながっているんですね。今回、D&Iとタッグを組んだことで感じた良さはどんな点でしょうか?
D&Iが有するノウハウやリソースを提供してもらえたのはもちろん、さまざまなメリットを感じていますが、一番は高い採用成果を出せたことではないでしょうか。実は私たちは、これまでの歴史であまり外部の企業と一緒に仕事をしたことがなく、当初はどのように進めるべきか迷う点もあったんです。しかし、気づけばすぐそばにD&Iのみなさんがいて、私たちの方針を理解したうえで一緒に取り組んでくれました。結果、自分たちでは到底なしえなかった高い成果を出すことができた。この事実はとても大きいと思っています。
障がい者雇用で目指すゴールは決まっているのに、どう進めばいいか分からない、自分たちだけではゴールに辿り着けないと悩んでいる企業は多いでしょう。そういった企業にとって、RPOサービスに限らずD&Iはとても力強い存在になってくれるはずです。
──最後に、髙栁さんが今後実現していきたいことを教えてください。
D&Iのサポートもあって障がい者の雇用人数も増え、アウトソーシング事業で受託する業務もかなり増えました。事業は順調に拡大していますが、当社が特例子会社であることを踏まえると、「特例子会社にとっての成長とは何か?」を改めて考えるようになりました。例えば生産性が2倍になったらそれは成長なのか?それを障がいがある方全員に求めるべきなのか?そうじゃないならどこを目指していくべきか?一般的な事業会社と特例子会社は違いますから、同じような成長を目指していくのは違うと思うんです。
この問題を考えるヒントになるのが、一人ひとりが自分らしく働ける「多様性」だと考えています。すぐに答えの出る問題ではありませんが、今後も考え続けていきたいです。
【編集後記】年間100名以上の障がい者雇用をしている会社は多くないかもしれませんが、インタビュー時に印象に残ったのが、同社が常に改善を繰り返していることです。説明会の質問などから問題点を見つけ、それを改善に活かすことが高い成果にもつながっていると感じました。
また、世の中にはさまざまなRPOサービスがありますが、D&IのRPOサービスは企業に寄り添い、現場に入って伴走していくことを大事にしています。障がい者雇用といっても企業ごとに課題は違いますので、企業ごとに異なる課題やニーズに沿ってサポートしてもらえるのは大きな魅力ではないでしょうか。同社は今後も多くの障がい者を受け入れていくとのことですので、現場でのさまざまな取り組みに注目していきたいと思います。