『エンカク』導入で分かった、テレワーク雇用の有効性と障がい者の活躍ポテンシャル

日本軽金属株式会社 人事部 課長  
 
八甫谷 喬秋 様

POINT

 課題
障がい者の法定雇用率の上昇に伴い特例子会社以外での採用手段を見つける必要があった。

 取り組み
業務切り出しの支援もある『エンカク』を導入し、テレワーク雇用による精神障がい者の受け入れを決めた。

 成果
想像以上に多くの応募があり、人事部で1名が勤務スタート。営業部門など別部署でのテレワーク雇用も進んでいる。
民間企業での障がい者の法定雇用率は、2024年4月に2.3%から2.5%となり、2026年7月より2.7%へと引き上げられることが決まっています。一方でDXの進展等により、企業における業務構造の見直しが進められる中で、これまで障がい者の方が専門性を発揮してきた定型的な業務は減少しつつあります。こうした状況において、障がい者のテレワーク雇用によってその課題を解決しようとする企業が増えつつあるのをご存知でしょうか。
 
日本軽金属株式会社も、障がい者のテレワーク雇用を始めた企業の一社です。今回は人事部の八甫谷(はっぽうや)さんにインタビューを実施し、日本軽金属グループにおける障がい者雇用の現状や課題、テレワーク型障がい者雇用サービス『エンカク』の導入理由や導入後の成果などを語っていただきました。

『エンカク』導入で分かった、テレワーク雇用の有効性と障がい者の活躍ポテンシャル

 


法定雇用率の上昇に伴い、障がい者雇用において発想の転換が求められていた

 

──まずは、日本軽金属グループにおける障がい者雇用の取り組みからお伺いしていきます。テレワーク雇用を始める前はどのように採用を行っていたのでしょうか?

日本軽金属グループでは、2011年から知的障がい者を中心に障がい者雇用を進めてきました。日軽金オーリス株式会社という特例子会社を設立し、工場や研究施設における各種業務を担当してもらっています。

事務作業や、屋内外の清掃や美化、塗装作業、草刈り・樹木選定などの緑化作業に加え、社員食堂の調理補助や製菓などの飲食業務、製造・研究開発補助業務など幅広く担当してもらっています。各自の能力や状況に合わせて業務範囲を広げていくイメージです。

2024年1月には、障がい者雇用の強化とグループ従業員の意識向上などを目的として、日軽金オーリス株式会社のホームページも全面リニューアルしました。グループ従業員からの反響も上々で、今後につながっていくのではないかと考えています。

▼2024年1月にリニューアルした日軽金オーリス株式会社ホームページ

 

──社員インタビューや座談会、仕事紹介、一日の流れなどかなりコンテンツが充実していますね。 一方で障がい者雇用で感じていた課題は何でしょうか?

2012年からの12年間で、静岡の工場や研究施設において、知的障がい者を中心に約30名を雇用してきました。しかし、障がい者の法定雇用率が段階的に上昇していく中で、早い段階から静岡での採用だけでは厳しくなることも分かっていました。そこで東京の日軽金グループ本社でも障がい者の方を迎えたり、特別支援学校と連携してインターンシップの受け入れを始めたりと新しい取り組みを行っていたんです。

しかし、東京のグループ本社はペーパーレス化が進み、フリーアドレス制も導入していたため、オフィスの机の上にほとんど書類がない状態。知的障がい者の方にお任せできる業務が限られてしまっていました。パソコンのキッティング作業など業務範囲も広げていってはいたものの、継続的に障がい者雇用を行っていくほどのボリュームは生み出せません。こうした中でどう採用人数を増やしていくかという課題がありました。

 

──これまでやってきた取り組みの延長戦では厳しいと。

法定雇用率の上昇率を考えると、今後2年間で、過去12年間の実績と同じ約30名を採用しなければいけない状況でした。また、法定雇用率が上がると分かったときから企業間での人材の取り合いが激しくなっており、これまでメインだった知的障がい者の方もなかなか採用できなくなっていました。これまでのやり方では難しいと感じる中で、大胆な発想の転換が必要になっていたんです。

 


『エンカク』の魅力は、業務の切り出しなどからまるっとお任せできる点

 

──その結果、日軽金グループではテレワーク型障がい者雇用支援サービス『エンカク』を導入されました。ここでは、D&Iからサービスの提案を受けた際の印象や、サービス導入を決めた要因は何だったのでしょうか?

提案を受けたときの最初の印象は、イメージが湧かないというのが正直なところ。車椅子など身体障がい者の採用も難しく、知的障がい者の採用もどんどん難しくなっている。残る選択肢は精神障がい者ですが、さまざまな状態の方がいらっしゃる中で、「テレワークで働きたい、もしくは働けるのってどんな人だろう?」と具体的にイメージできていませんでした。そこから『エンカク』の導入を決めたのには二つの要因があります。

まずは、サービスありき、機能ありきの提案ではなく、社会背景なども踏まえた上で障がい者雇用テレワークの必要性について説明があってイメージしやすかったこと。障がい者雇用の領域で何が起こっていて、それに対して国がどう考え、どう取り組んでいこうと考えているのか。社会全体でどう向き合っていくべきかという意図を提案から感じ、自社でも実現できそうだと感じました。

法定雇用率をいかにクリアするかの話だけでなく、障がい者の戦力化を重視している点も良かったです。自分たちの仕事にはまだ切り出せるものがあり、それを集約し、オンラインで障がい者の方に担当してもらう。それが会社にとってメリットも意義もあるという話が印象に残りました。

D&Iのサポートが手厚い点も魅力に感じました。採用支援のみならず、キックオフミーティングから業務切り出しサポート、採用後の育成・戦力化・フォローなどをまるっとお任せできる。これなら運用サイクルも回りそうだとイメージできました。

 

──そうやって『エンカク』導入が決定し、人事部から障がい者のテレワーク雇用を始めることになりました。運用開始後にはどんなことを感じたでしょうか?

新しい取り組みを始める際は関係部署を巻き込むのが大変ですが、現場社員への説明会からお任せできるのは改めてありがたかったです。おかげで現場からは特に反発もなく、スムーズに受け入れてもらえたと感じています。

業務の切り出しには多少苦戦しましたが、最初はこんなものかなと。人事部でも自分たちがやらなくていい仕事をやってしまっていると以前から感じていましたが、仕事には一連の流れがあり、一部だけを切り出すのは簡単ではないと思っていましたから。一人ひとりが責任を持って取り組んでいる仕事を、遠く離れた、しかも会ったこともない人に抵抗なく任せられるだろうか。そこが一番難しいポイントだと感じていましたが、最終的には切り出す業務も決めて人材の募集をスタートしました。

 

──募集開始後の印象はいかがだったでしょうか?

非常に驚いたというのが率直な印象です。募集開始直後からたくさんの応募があり、面接をしても良い方たちばかり。そこから優秀な方1名の採用も決まりましたし、テレワーク雇用で障がい者の方に活躍してもらうのは正しいところを突いていると感じました。

同時に感じたのが、社会の歪みのようなもの。本人が働きたいと思っていて、例えば「電車で通勤できない」というだけで、それ以外は問題なく就業できる。世の中には環境次第で活躍できる方がたくさんいるのに、現実には仕事がなくて働けていない。逆に毎日通勤ができる、快活なコミュニケーションがとれるといった点が重視されすぎて、そこに就業の機会が偏っていないか。応募者の方々と出会うまでは、そもそもこうしたことがアンバランスだと感じることすらできませんでしたし、一方で障がい者のテレワーク雇用は状況を変えていく一手になるのではと感じました。

初めてのテレワーク雇用実施にあたり、面接時のポイントを共有していただけたのもありがたかったです。一番大切だと感じたのは、障がいの重い軽いではなく、障がいを持っている方が自身の障がいに対する自己理解ができているか。それさえできていれば、どんな障がいがあろうと、周囲がどんな配慮やサポートをすべきかが分かります。正しく自己理解ができていることの重要性は障がい者雇用に限った話ではないですが、改めて説明いただいたことで採用活動でも迷うことなくスムーズに進められました。

 

テレワーク雇用の可能性だけでなく、
障がい者の活躍ポテンシャルにも改めて気づいた

 

──採用後の受け入れはスムーズに進んだのでしょうか?

今回入社された方には、人事部のサポート業務、具体的には採用関連のシステム周りの業務をお任せしています。非常に優秀な方に入社いただきましたし、仕事が好きな方で意欲的に取り組んでいただいています。初めてのテレワーク雇用で手探りの部分もありますが、D&Iには専任の『エンカクトレーナー(※)』がおり、そのサポートがあったこともありがたかったです。事前にエンカクトレーナーが本人と関係性を築いており、何をケアすべきかを入社後早々に把握できていたので安心してスタートをきれました。

一方、初めてテレワーク雇用で気づいたこともありました。例えば、本人のすぐ横で付きっきりで見られない不安感があったり、業務の任せ方が難しくてどうしても手が空いてしまう状態になってしまったり。手が空いた時間もD&Iが提供するeラーニングを受講してもらうなどしましたが、そういった時間に対応してもらう業務も用意すべきかなと感じています。本人の意欲や頑張りが想像以上だったこともありますが、この問題には今後対応していきたいと考えています。

(※エンカクトレーナーとは)
「エンカク」では、障がいをお持ちの方に対して専任の「エンカクトレーナー」が付き、初めてテレワークで働く方でも安心して取り組めるよう、企業様とワーカーの橋渡し役として定期面談や仕事の進め方のアドバイスをしています。

 

──受け入れた側の社員のみなさんの反応はいかがだったでしょうか。

採用後しばらくして知ったのですが、人事部内でもキャリアの浅い入社3、4年目の若手社員たちが一番面倒を見てくれていたんです。彼ら彼女らにとって後輩を迎えるのは初めての経験となるものの、「もしかして今、手が空いていますか?」「Zoomでちょっと話しましょうか?」と様子を見ながらコミュニケーションを取ってくれていて。

あくまで個人の自発的な動きかもしれません。しかしこれから障がい者のテレワーク雇用を導入した部署で、一人でも二人でもこうした行動が生まれていけば、採用した人材の定着や活躍にもつながりますし、会社全体の雰囲気もちょっとずつ変化していくかもしれないと思っています。D&Iからのサポートもありますが、こうした動きは良い変化だと捉えたいです。

今後、障がい者のテレワーク雇用がさらに進んでいけば、テレワークで働く方同士の横のつながりもつくっていきたいです。ちょっとしたコミュニケーションを取れる場があれば、定着や活躍にもつながっていきますから。初めてのことで手探りの部分はありますが、今回気づいたことを活かし、今後の展開にもつなげていきたいと思っています。

 

──今後の展開についてはどのようなイメージをお持ちでしょうか?

今回の取り組みは人事部からスタートしましたが、現在は営業部門でも業務切り出しから入ってもらって採用活動を行っているなど、他部署への展開も始まっています。最初に採用した方が非常に良い方で、確かな手ごたえを感じたからこそ、他の部署にも紹介しやすいと感じています。今後新たな壁にぶつかるかもしれませんが、全社的に横展開していけるイメージも持てています。グループ各社の人事部にも取り組み内容を案内していっているので、これまで取り組んできた特例子会社での障がい者雇用と両輪で進めていきたいと考えています。

経験のない取り組みで不安もあったものの、テレワーク雇用の可能性も感じましたし、何より障がい者の活躍ポテンシャルには驚きがありました。新しい採用手法、受け入れ手法として確立できると感じたので、これからその精度をさらに高めていきたいです。

D&Iの『エンカク』なら、導入時の部門への説明から業務の切り出し、人材の募集から採用、さらには入社後のフォローまで丸ごとサポートしてもらえます。働く人の気持ちにも寄り添い、しっかり伴走してもらえるのが一番の安心材料です。私たちもさほど苦労せずに導入できたので、ぜひ他の会社にもオススメしたいです。

【編集後記】
「働きたいけど働けない。能力はあるのに事情があって採用されない。そんな方々は少なくありません。アンフェアな世の中になっていますが、それが『エンカク』をはじめとするD&Iのサービス、さらにはD&Iからの情報発信によって変わっていくといいですね」八甫谷さんにお話を伺っていて印象に残った言葉です。障がい者のテレワーク雇用を通じて、障がい者が活躍するポテンシャルについて改めて気づいた同社ならではの考えだと思います。障がい者のテレワーク雇用を検討しつつも一歩踏み出せていないという企業があれば、ぜひ改めて検討していただきたいと感じた取材でした。
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