定着支援サービス『ワクサポ』利用者に聞いた、定着と戦力化への有効性
蓑毛 淳 様
田儀 浩明 様
POINT
課題
法定雇用率達成のために障がい者雇用に取り組み始めるが、定着、戦力化がうまくいかず早期離職が続いてしまっていた。
取り組み
新たな入社者を迎える際にD&Iの定着支援サービス『ワクサポ』を導入。カウンセラーによる定期面談により定着と戦力化をサポート。
成果
入社者は5年目を迎えて業務領域も広がり、無期雇用も検討中。他部署の障がい者雇用についても自信を持って進められるようになった。
定着支援サービス『ワクサポ』利用者に聞いた、定着と戦力化への有効性
──まずは、定着支援サービス『ワクサポ』の導入経緯からお伺いします。『ワクサポ』を導入するまで、貴社の障がい者雇用はどんな状況だったのでしょうか?
障がい者雇用に積極的に取り組み始めたのは、2016年頃。法定雇用率を達成できていなかったことから新たに採用をスタートしました。とはいえ障がい者雇用の実績がなく、社内にノウハウがなかったことから、まずは人事部で受け入れることを決めました。
しかしせっかく採用できても、会社に馴染めないなどの理由から早期離職につながってしまうことが何度か続いてしまって。こうした背景から、入社者が長期的に活躍できる体制づくりが必要じゃないかと考えるようになっていました。
──『ワクサポ』の導入を決めたのはどういった理由だったのでしょうか?
D&Iには人材紹介を通じて採用支援をしてもらっていましたが、定着や戦力化の悩みを相談する中で、定着支援サービス『ワクサポ』を紹介してもらいました。
これまで人材を受け入れてきた当社としても、例えばコミュニケーション量を増やしたりと、いろいろ試行錯誤はしていました。しかし、なかなか定着化につながっていなかったんです。『ワクサポ』は資格を持つ専門家に話を聞いてもらえるので、自分たちでは気づけなかった改善点を見つけられるんじゃないかと感じました。そこで、2019年11月に田儀さんが人事部に入社するタイミングでテスト導入をすることになりました。
──田儀さんが入社した経緯についても教えてください。
私は学生時代にD&Iの人材紹介サービスに登録していて、卒業後はある企業に就職しました。その会社では一定期間勤務しましたが、精神的な疾患を患ってしまって休職となり、その後退職していました。しばらく休養すると次第に体調も良くなったので、改めてD&Iの人材紹介サービスを利用し、紹介してもらったのが当社でした。
転職先を選ぶ際の条件が、自分の障がいをオープンにできることと、中長期的に働けるということの二点。当社はその条件に当てはまっていましたし、担当業務が前職での仕事に近かったこともあり、ここで頑張ってみようと入社を決めました。
──続いて、田儀さんの入社後について伺っていきます。田儀さんの担当業務や、入社してみての感想はいかがでしょうか?
田儀さんには現在、人事課のサポート業務を幅広く担当してもらっています。データの入力や管理、契約社員・派遣社員の契約書の管理といった業務から、採用関連だと面接の準備や資料の用意などもお任せしています。他にも年1回の経営計画をまとめる際には、人事課が人員計画をまとめる役割を担っていますので、各部門から報告があった人員計画を集約し、経営会議資料に反映する業務もやってくれています。
入社5年目を迎えましたが、毎年少しずつできることを増やしながら、徐々に守備範囲を広げてきました。今では、人事課の大きな戦力として活躍してくれています。
入社後の感想としては、周りのみなさんにも相談しやすく、働きやすい職場だと感じました。自分一人で進められる業務も任せてもらえたので、集中するときは集中し、分からないことがあったら気軽に質問できます。ちょうど良い距離感の職場です。
入社してすぐのタイミングは体力的な問題もあり、業務量や業務時間を少し制限してもらっていましたが、そういった配慮も非常に助かりました。手取り足取りこまめにフォローという感じではなく、個人を尊重しつつ、一人ひとりの状況や状態に合わせてサポートしてもらえたのが自分にとっても合っていると感じました。
──定着支援サービス『ワクサポ』を利用してみての感想はいかがでしょうか?
私は通勤中に誰かの心無い行動に遭遇すると、一日中ずっとモヤモヤしてしまうことがありました。しかし『ワクサポ』を利用するようになってからは、だんだん早い段階でモヤモヤした気持ちを解消できるようになったんです。以前は一日中気持ちを引きずってしまっていたのが、午前中とか、始業後30分で気持ちを整理できるようになったことで、仕事にもより集中できるようになりました。
『ワクサポ』のカウンセラーと話す時間は、とてもリラックスできる時間、楽しみな時間となっています。月1回、カウンセラーの方が来社し、仕事のことからプライベートのこと、キャリアや生き方のことまでいろいろとヒアリングをしてくれるんですが、第三者に言語化して伝えることが自分の気持ちを整理するのに役立ったように感じます。
田儀さんが入社してから、自分でも密にコミュニケーションを取っているつもりでしたが、例えばプライベートの話題など、『ワクサポ』だからこそ聞ける話、分かる状況があったと感じました。「自分では気づいていなかったけど、あのとき本人はそう感じていたんだ、受け取っていたんだ」そんな内容をカウンセラーからフィードバックしてもらうことで、田儀さんとのコミュニケーションにも役立てられるなど、変えていくべきことに気づけるのはとても良いことだと感じました。
あるとき、田儀さんとカウンセラーの間で、健康診断の結果からもう少し運動する必要があるという話題が出たそうなんですね。その話をカウンセラーから聞き、会社主催の健康増進の取り組みに参加しようと誘ってみたんです。対象期間中にどれだけ歩いたかを競うイベントでしたが、上位に入賞すればプレゼントがもらえるということで、一緒に参加してみないかと。結果的に多くの猛者がいて上位入賞は叶わなかったものの、仕事以外での話題ができたことは大きかったです。『ワクサポ』で第三者に入ってもらうことにより、コミュニケーションのパターンもより幅広くなったように感じています。
それに何より、田儀さん自身が『ワクサポ』の面談を非常に楽しみにしているんです。毎月の面談も楽しそうにしているので、とても相性が良いんだなと感じていますし、会社にとっても定着、戦力化の観点ですごく助かりました。そんな有意義なものなので、テスト導入終了後も田儀さんが必要とする限り『ワクサポ』を利用することにしました。
──『ワクサポ』の面談によるサポートもあり、田儀さんは入社5年目を迎えました。長期的に働くことで感じている変化は何かありますか?
長く勤務することで、仕事に関する知識やスキルが身につきました。社内でやり取りする人も増え、視野も広がったように感じます。例えば仕事で質問するときも、どのタイミングで話しかけるべきとか、どういった質問の仕方が良いのかなど、ちょっとした工夫もできるようになりました。一つひとつは小さなことかもしれませんが、長く働くことで自分の変化や成長を実感できる機会も増えています。
プライベート面でも、趣味の運動を通して新しいつながりができたりと、生活の楽しみが増えています。仕事に落ち着いて取り組めるようになったことで、プライベートの時間も充実させられるなど、好循環が生まれていますね。
──今回、田儀さんの受け入れ、また『ワクサポ』の利用を通じて感じたことを教えてください。
焦らず待つことが大事なんだと感じました。田儀さんは通勤中にストレスを感じると聞いていたので、最初は無理しなくていいよと伝えていました。まずは通勤できるようにしようと。そんなことを言っているうちにコロナ禍となってしまい、社員全員が強制的にテレワークとなる中で、一時はどうなるだろうと不安になったこともありました。
しかし、焦っても何も始まりません。私も障がい者雇用について分からないことが多かったですが、『ワクサポ』からのフィードバックを参考に田儀さんとの関係性を築いていきました。田儀さんも『ワクサポ』の面談を重ねる中で徐々に仕事に集中できるようになり、任せられる仕事の幅も広がっていきました。
そうやって一緒に働き、相互理解が進んでいくうちに、田儀さんにどんな仕事を任せたらいいのかも分かるようになっていったんです。人事部にもさまざまな業務がありますが、「この業務は得意だろうな」「これはちょっと苦手かもしれない」と分かるようになってきて、本人とも話しながらできることを増やしていけました。
そんなやりとりを続けてきた結果、田儀さんは今、「人事部にとってなくてはならない存在」として活躍してくれています。当初は法定雇用率の達成に向けて、というところからの採用で、2019年11月に入社してすぐにコロナ禍、テレワークとなったりと大変なこともありましたが、今振り返るとお互いによく乗り越えたなと感じています。田儀さんも私も焦らずやっていこうと取り組んできましたが、そんな中でも会社にとって欠かせない戦力へと成長してくれたことは非常に嬉しく感じています。
できることやできないこと、得意なことや苦手なこと、みんなそれぞれ違います。だからこそ焦ることなく、じっくりコミュニケーションを取りながら一つずつ解決していくことが大切ではないでしょうか。
──実はこのインタビューは、田儀さんからぜひ受けてみたいとご提案いただいたのですが、なぜ受けてみようと思われたのでしょうか?
自分にいろいろしてもらった恩返しとして、自分が体験したことや感じたことを伝えていきたいと思ったのが一番の理由です。長く働ける環境で働きたいと思って当社に入社し、入社5年目を迎えました。いろいろな知識を身につけられましたし、できる仕事も増えました。社会人として生きていくにあたって、長く働くことでさまざまな知識や経験を得られることが自分にとって一番嬉しいことだと感じました。そんな気持ちを、自分と同じように感じている人にもぜひ伝えて行けたらと考えたんです。
ちなみに、入社1年目からその日にやった業務を手帳に記録するようにしていたんですが、5年目になると任せてもらう業務も増え、手帳に書く内容もかなり増えました。昔の記録と比較して振り返ってみても、できることが増えたことで、自分の成長を分かりやすく実感できています。長く働くことで変化や成長を感じられることも多いですから、これから働き始める人も焦ることなく着実に取り組んでいってほしいです。
──蓑毛さんが『ワクサポ』を他の企業様に勧めるなら、どんな点を勧めますか?
第三者の専門家がいる安心感でしょうか。会社には直接言いにくいことでも、『ワクサポ』のカウンセラーなら何でも相談できますし、面談の内容をもとに課題を解決していけます。特に当社の場合、障がい者雇用に関するノウハウがない中で、ただ人材を紹介してもらうだけでなく、採用後もしっかりフォローしてもらえたのは助かりました。
田儀さんも入社直後からサポートしてもらったおかげで、スタート段階で躓くこともなく、長く活躍してくれています。入社した障がい者の方のみならず、受け入れる側の会社にも良いことが多くあります。採用して終わりではなく、定着、戦力化についてもノウハウの提供やサービスの提案をしてもらえる点はぜひオススメしたいですね。
──もともと人事部 人事課で始まった障がい者雇用ですが、全社への展開はいかがでしょうか?
この数年で社員数も増え、追加で障がい者雇用が必要になりましたが、田儀さんの活躍ぶりもあって人事部以外の部署にも提案しやすくなりました。田儀さんを受け入れた際にうまくいったこともいかなかったことも正直に伝えることで、リアリティのある説明ができています。その影響かもしれませんが、2024年上期は1名採用できればと思っていたところ、4名もの障がい者を採用し、みんな活躍してくれています。
当社では障がいの有無に関係なく、「こんなことをしてみたい」「あれにチャレンジしてみたい」と希望したらどんどん任せていく方針を取っています。もちろんサポートはしますが、できると判断すれば任せていくのが当社の文化です。そうやって成長していける環境がありますし、今後も継続的に採用活動は行っていきますので、興味を持った方はぜひ当社でキャリアを築いていってほしいです。
最後になりますが、田儀さんの活躍があったからこそ、他の部署でもうまく障がい者雇用を進められています。一人の活躍が、会社全体を変えていったわけです。田儀さんの頑張りはもちろんですが、それを支えてくれた『ワクサポ』にも感謝したいですね。
【編集後記】取材で印象に残ったのが、蓑毛さんと田儀さんの関係性の良さです。「自分が大雑把な性格で、田儀さんがしっかりしていたのがちょうど良かったのかもしれませんね」蓑毛さんはそう謙遜していましたが、一緒に長く働くことで関係性が築かれ、田儀さんも仕事の幅を広げていけたのだと感じました。当初は法定雇用率の達成がゴールだった障がい者雇用でしたが、田儀さんをはじめ、多くの人材が各部署で「なくてはならない存在」として活躍されていることにも驚きました。このような企業と障がい者の方々の双方に喜びのある雇用が増えていけばと思います。法定雇用率も上がり採用が難しくなっている中で、定着、戦力化は今後さらに重要になってくるでしょう。その中で『ワクサポ』をはじめとする定着支援サービスの活用可能性もさらに高まっていくのではないでしょうか。