スキルだけでなく“マインド”を重視。障がい者の活躍・定着を推進するイオンモールの採用改革 
 
イオンモール株式会社
 
 
 管理統括部 採用・育成部長 
 岡本 章世(写真右)
 管理統括部 採用・育成部 採用グループ
 石渡 羽澄(写真左)
    

POINT

 課題

従来の身体障がい者を中心とした採用から、精神障がい者の受け入れへと方針を広げたものの、実例の少なさや先入観から、業務適性や定着に対する確信を持てずにいた。


 取り組み

自社の採用ニーズを深く理解したD&I経由のマッチング精度が高い候補者に対し、「戦力として期待する」姿勢はそのままに、「先入観を持たず、まずは会ってみる」ことを選考の基本として徹底した。


 成果

年間10名以上の採用を実現し、その大半をD&I経由が占めた。配属された各施設においても彼らの活躍ぶりに「戦力として捉えている」という声があがっており、採用数のさらなる増加に向けた手応えを得られている。

イオンの中核企業として大型ショッピングモールの開発・運営を行い、国内外で約200施設を展開しているイオンモール株式会社。同社の施設には老若男女を問わず、また障がいをお持ちの方も多くいらっしゃることもあり、社内におけるダイバーシティ&インクルージョンも積極的に推進しています。近年は精神障がいをお持ちの方の積極的な受け入れもスタートし、1年で10名以上採用と大きな成果をあげています。

多くの企業が不安や悩みを抱えている「精神障がい者雇用のハードル」をどう乗り越え、現場の戦力としての採用に至ったのか。今回は、管理統括部 採用・育成部で部長を務める岡本さん、採用グループの石渡さんにインタビューを実施し、障がい者雇用における実際の取り組み、今後の展望などを伺ってきました。

スキルだけでなく“マインド”を重視。障がい者の活躍・定着を推進するイオンモールの採用改革

 


「戦力」としての採用を重視。身体から精神へ、採用方針転換の背景と課題

 

──まずは、お二人のプロフィールから教えてください。

岡本さん
私は2007年にイオンモールに入社しました。イオンモールでは、ほとんどの社員が入社後に全国の各施設で運営業務を担当するのですが、私も15年ほど運営業務を経験しました。その後に本社の人事部門へ異動となり、採用や人材育成を担当するようになり、現在は管理統括部で採用・育成部長を務めています。

石渡さん
私は2016年に入社し、同じく専門店の営業支援や施設の販促・プロモーションなどを担う営業や、施設管理や防火防災などを担うオペレーションといった施設の運営を経験した後、2021年から採用・育成部の採用グループへ異動となりました。最初は新卒採用やキャリア採用をメインに担当していましたが、2024年の秋頃から障がい者雇用をメインで担当しています。



──これまでの障がい者雇用の取り組みについても教えてください。

岡本さん
障がい者雇用は以前から取り組んでいましたが、身体障がい者の採用がメインでした。イオンモールには多岐にわたる業務がありますが、各施設を少人数で運営しているため、一人ひとりに臨機応変な対応力が求められます。それゆえ決まったマニュアル通りに進められる業務や変化が少ない仕事がなく、精神障がいをお持ちの方の採用は難しいのではないかと考えていたからです。また、当社では障がい者を戦力として採用し、健常者と同じように働けることを重視していたことも、受け入れの障壁になっていました。

しかし、時代の変化とともに障がい者雇用をさらに進めていく必要性を感じる一方で、身体障がい者の採用が年々難しくなってきました。そこでリサーチを進める中で、障がい者雇用市場の動向は精神障がいのある方が大きな割合を占めている現状を再認識し、2024年頃から精神障がい者の雇用にも注力していくことを意思決定しました。

 

石渡さん
全国のイオンモールには、障がいをお持ちの方を含め子どもからお年寄りまで幅広い世代の方がいらっしゃいます。あらゆる世代のお客さまが集う場所だからこそ、働く側にも多様性があるべきだという考えが浸透していきました。障がいのある方を特別な存在ではなく、共に働く仲間として迎え入れる風土が必要になってきました。

とはいえ、全国の各モールの現場で万全な受け入れ体制が整っていたわけではありません。そこで、まずは本社にて精神障がいをお持ちの方を受け入れるところからスタートしました。いずれ現場に受け入れをお願いしていくためにも、まずは自分たちが受け入れ、知見を貯めていくことが必要だと考えたからです。



──精神障がいをお持ちの方の採用や受け入れを進めていく上での課題は何だったのでしょうか?

岡本さん
まずは、業務適性への不安です。精神障がいをお持ちの方は「変化の少ないルーチンワークの方が混乱せずに安定的に働けるのではないか」という先入観があり、少人数で一人ひとりに柔軟な動きが求められるモールの運営業務には不向きだという思い込みがありました。加えて、身体障がいと違って見えない障がいだからこそ、「どう接したらいいか分からない」「本人の意思とは関わらず、必要以上に配慮することによって本人が馴染めないのではないか」といった不安も大きかったです。

石渡さん
「イオンモール」という知名度やブランドイメージ、またお客さまとしていらっしゃったときに館内のバリアフリー設備の充実度を体感いただいていることから、過去にも多くの応募をいただいていました。しかしながら、当社はショッピングモールの開発・運営を行うディベロッパー(不動産)企業ではあるもののスーパーという「イオン」のイメージから小売りの品出しや接客の仕事をイメージされることも多く、実際に担当する業務を聞いて「難しそう」と辞退されてしまったりと、採用や入社後の定着につながっていないことも課題として感じていました。

 


「まずは会ってみる」が採用数増加のカギ。入社後の活躍ぶりも現場の不安を覆した

 

──D&Iの人材紹介サービスを利用するようになった経緯も教えてください。

石渡さん
当社の障がい者雇用においては、合同イベントや就労移行支援事業所、求人媒体などさまざまな手法を活用していましたが、なかでも人材紹介を多く活用していました。D&Iとは以前からお取引がありましたが、精神障がいをお持ちの方の採用を強化していくにあたり、改めて相談をしました。

特に期待をしていたのは、当社のことをよく理解してくれていたこと。外部からは分かりにくいモールの運営業務を深く理解してくれていたことに加え、「障がい者を特別扱いせず、戦力として期待する」という私たちのスタンスにも共感してくれていたため、ミスマッチのない採用ができそうだと考えていました。

岡本さん
段階的に引き上げられている法定雇用率に対して採用が追いついていないという焦りもありました。D&Iの担当である吉田さんに相談した際には、「身体障がいだけでなく精神障がいをお持ちの方の採用を改めて考えてみませんか?」という提案もありました。そういった提案も迷っていた私たちが決断できたきっかけになったと考えています。



──精神障がい者の採用をスタートしてからの成果はいかがだったでしょうか?

石渡さん
精神障がい者へターゲットを広げたことで、出会える人材が圧倒的に増えました。候補者自体がかなり増えたことで、採用につながるケースも増えていきました。

精神障がいをお持ちの方と面接でお会いしてみての感想としては、みなさんご自身の特性をしっかり理解されていて、「これはできる、これはできない」と伝えてくださる方が多いということ。お会いするまでは漠然とした不安を抱いていましたが、「どう配慮すればいいか」が分かりやすかったです。

受け入れる側も最初は不安だったかもしれませんが、私たち人事が最初に面接し、この方だったらと受け入れ部署の方に会ってもらったところ、「問題なく働いていただけそうだ」という反応があり、ほとんどのケースで採用に至りました。先入観を持たず「まずは会ってみる」というのが採用数増加のカギになったと感じています。

岡本さん
障がいのある社員の受け入れ体制強化にあたって、イオングループ全体では毎年研修を実施していて人事メンバーが参加しているほか、全社員が参加する人権研修も毎年実施しています。直近の研修は障がいをお持ちの方の人権というテーマで、全社員が理解を深めていっているところです。



──特に、2025年には大きな採用成果が出たと伺いました。

石渡さん
2025年には、D&I経由での7名を含め、計10名以上の採用ができました。実際に受け入れた部署からも「重要な戦力です!」という声をもらえていますし、ある部署からは「ものすごく力を発揮してくれていて、受け入れを躊躇っていたのが恥ずかしいくらいだ」といった声もありました。

岡本さん
逆に、受け入れ後に様々な課題が見えてきたケースももちろんございます。
障がい特性と当社の業務とのマッチング度合いや、受け入れにあたって実際にはどのような配慮が必要なのか、どういったトラブルが発生するのかなど、多くの知見を得ることができました。



──人材紹介サービスの会社と数多く取引をする中で、D&Iを評価している点はどこでしょうか?

石渡さん
本当に一番信頼しているエージェントです。私たちの仕事は外部からは分かりづらい部分があるのですが、D&Iの吉田さんはそこを深く理解した上で、的確な候補者を紹介してくださいます。吉田さんからの紹介はマッチング精度が高いため、当社とちょっと経歴が合わない方かなと感じても「一度会ってみよう」と思えるほど信頼しています

 

岡本さん
マッチング精度のみならず、問い合わせに対するリアクションも速いなど、採用に至るまでの連携も非常にスムーズです。候補者について他社さんと競ることもあるのですが、どうすれば内定承諾をいただけるかについて一緒に考えていただいたりと、入社までしっかりサポートいただいていると感じています。

 


障がいをお持ちの方が当たり前に働ける環境をつくり、気づきを改善に活かしていく

 

──障がい者雇用を強化する中で見えてきたことはあるでしょうか?

石渡さん
最初は不安がっていた部署も、実際に会ってみると「働いていただくイメージが湧く」と反応が変わり、ほとんどのケースで採用・定着につながりました。「食わず嫌い」だっただけで、適切なマッチングができれば充分に戦力になることが実証できたと思います。

岡本さん
障がい者雇用においては、「何ができるか、何ができないか」といったように、スキルや障がい特性のマッチングにとどまってしまう部分も少なくないと思います。しかし一連の採用活動を通じて、スキルだけでなく、「仕事をどう捉えているか」「やりがいを持って働きたいか」というマインド重視のマッチングが当社の採用には有効だと感じました。候補者の志向性やマインドを丁寧にヒアリングし、前向きな方を採用したほうがマッチするだろうと。そういった点でもD&Iのマッチング精度は高いと感じましたし、D&Iが掲げる「義務から戦力へ」という理念が私たちの目指す姿と一致していたことも大きかったです。



──イオンモールとして今後実現していきたいことはありますか?

石渡さん
障がいをお持ちの方が社内で増えていくことで、「ここは車椅子だと通りにくい」「こういった休憩スペースがあると助かる」といったリアルな気づきが生まれます。それをハード(設備)やソフト(仕組み)に反映させることで、すべてのお客さまにとって快適なモールづくりにつなげていきたいです。

岡本さん
イオンモール独自の取り組みとして、「ふだんクエスト」という取り組みを行っています。これは館内の施設やサービスをユニバーサルデザインに即したものにするため、障がいをお持ちの方と同じ目線で館内を回るというもの。障がいのある方をリーダーとし、健常者のメンバーとチームを組み、車椅子に乗った状態や耳栓をした状態で館内を回り、生活に潜む障壁を「モンスター」に見立て、それを攻略(解決)していくというクエスト形式で実施。そこで見つけた障壁については、その後の会議で具体的な改善案をまとめました。

これまでの取り組みは従業員向けでしたが、今後は専門店さまやお客さまも参加できるようにし、地域全体で障がいへの理解を深めるイベントに発展させていきたいです。社内で障がいのある方が当たり前に働ける状態をつくることで、こうした取り組みも前進するでしょう。

「イオンモールは、地域共創業へ。」という2030年ビジョンを掲げていますので、社内のみならず、地域社会も巻き込みながら相互理解の取り組みを進めていきたいです。



──最後にメッセージをお願いします。

岡本さん
私たちが障がい者雇用で実現したいのは、一緒に働く仲間からダイバーシティを広めていき、すべての人にやさしい空間をつくりたいということです。お客さまはもちろんのこと、日々一緒に働く社員だったり、専門店さまだったり、誰にとっても開かれた会社になっていけたらと思っています。

石渡さん
障がい者の雇用率を上げていくために、業務を切り出したり、雇用形態や評価制度を変えたりすることも考えたのですが、それは必ずしもダイバーシティ&インクルージョンにはつながらないのではと考えました。もちろん全てが平等で公平という訳にはいかないかもしれませんが、本当の意味で働くうえでの障壁を無くし、皆さんが自分らしく活き活きと活躍できること、この考え方に共感し、やりがいを持って働きたいと思った方にぜひ応募してほしいですね。

【編集後記】
D&Iが大切にしている「義務から戦力へ」という考え方をまさに体現している企業だと感じました。現場の思い込みを乗り越えて精神障がいをお持ちの方を受け入れること、「まずは会ってみる」こと、スキルだけでなくマインドを重視した選考を行うこと…こうした一つひとつの取り組みが高い成果につながったのでしょう。イオンモール様のチャレンジとより良い職場づくりを今後も見守っていきたいと感じました。
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